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第19話
翌日。薫の作った朝ごはんを食べ、ジキルとジェリーと出掛けることになった。本は昨日から1度も開けていない。開く覚悟が薫にはなかった。2人にも話せていない。
「本当に行くのですか?」
「カオル。服も揃えなければならねぇだろ」
「ジキル。でも」
「あら。カオル。首元が寒いわよ。
マフラー貸してあげるわ」
ジェリーが巻いてマフラーから、ジェリーと同じ匂いがした。
「あったかい。ありがとうジェリー。
ジェリーとジキルは彪族なんですか?」
「そうよ。オレも聞きたいことがあるのよ。
年齢いくつ。オレが28。団長が29よ。
カオルは10代よね。肌も若くて羨ましいわ」
まさか、10代に見られていたなんて薫は思っていなかった。昔からかなり童顔に見られていた。彼らがわたしを子ども扱いしていた理由がやっと分かった。
「あの、わたし。こう見えて29で団長と同い年です。紛らわしくてごめんなさい」
そんなに意外だったのか。ジキルが持っていた革の袋を落とした。中からジャラと音がした。ジェリーも固まっている。
「オレの1つ上。本当に」
「はい。10代に間違われることは良くありますから」
「行くぞ。雪は止んだみてぇだ」
昨日まで降っていた雪がやんでいる。落とした革袋拾い上げたジキルが薫の側にやって来て、薫の右手を掴んだ。
「先ほど言いました。わたしは29歳。子どもではありませんから手なんて繋がなくても」
「俺が繋ぎたいだけだ」
「そうよ。オレは左。行きましょう」
出掛ける。楽しみに思えたのは、薫は生まれて初めてだった。
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