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第44話

「しっ神官長さま」  神官長がいるのは神殿に作られた豪華な神官長の部屋だ。神官長は今年で60。うさぎの獣人だ。 「なんだ。無粋だな」  騒ぎに気付いてはおらず、行為の真っ最中の神官長に下っ端神官も呆れていた。 「お伝えしたいことが」 「まぁ良い。少し待て」  ボロ雑巾のように投げ捨てられた男の子が、血を吐き死んだ。今さら気が付いた。この子には他の人生があったのに。わたしを含め、神殿に捕まらなければ。わたしは何人の獣人を殺したのだろう。 「待てません。あなたは何に遣えていらっしゃるのですか?」 「何を言うておる。神はわしの行いを認めておる。  じゃから裁かれない。そうじゃろ。わしらは選ばれている。  このゲームを楽しんだらどうじゃ。死体は捨ておけ。  わしは行かぬ。まだまだ、男はおるからな。ではな」  風呂場の方に歩いて行ってしまう。神官長。 「わっ分かりました」  下っ端神官が神官長の部屋を出ると、副神官長に出会った。いつもは病弱で部屋から出ることはない。 「かなしい。げほ、歌。神様は嘆いている。  わたし、げほ。げほ。うご、動かなければ」 「無理ですよ。副神官長。その体では」 「このままにしては、げほ。地下に連れて行くのです。わたしを」 「ですが」 「このまま朽ちるなら、せめてまだ生きている者を助けたい」 「分かりました」  副神官長に肩を貸し、地下へと歩き始めた下っ端神官は願っていた。どうか神がいるならこの方を長生きさせてくださいと。

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