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ー友情ー7

「え? あ、まぁ……普通やと思いますよ……」  そうごくごく普通に返す桜井。 そして、 「あー、ホンマやったんやなぁ。 この前の時はまだ目が覚めてなかったし、良く見えてなかったかもしれへんのやけど……でもな、今、改めて見ても、べっぴんさんっていうのは変わらへんのかもしれへんな。 男性でこんな綺麗な顔立ちしておったら、そりゃ、女性と間違われても仕方がないと思うねんけど」 「そうですかぁ? 貴方にはそういう風に俺が見えているようなんで、一度、目の検査も方もしてもてはいかがでしょうか? まぁ、この機会ですし、全体的に検査してみてはいかがですかね?」  ついこの間、雄介にそんな風に言われて今まで忘れていた事だったのだけど、今の雄介の言葉で再び望の心に蘇ってしまったのかもしれない。 もう二度と誰にも言われたくない言葉をだ。 きっと今の望は心の中で怒りに震えているのであろう。  そして今の望は内心では相当苛立っているのか注射を打つ手に少し力が入ってしまったようだ。 「ちょ! 今のはホンマに痛かったわぁ」 「まぁ、注射は痛いもんですからね!」  そう和かに言っている望なのだけど、痛くしたのはわざとなのかもしれない。 それほど望はその桜井という人物に対して今はムカついているのだから。  イライラを隠したかったのか、それとも直ぐに他の仕事をしたかったのかは分からないのだが、望は気持ち的に足を踏み鳴らしてまで、その後直ぐに桜井の病室を後にするのだ。  この前、桜井に会った時はまだ朝方で患者さんの気配はなかったのだけど今時間というのは病棟の方も賑わって来る時間だ。 望はその中を歩く。  まだ望は桜井が言っている言葉を引きずっているのか表情を強張らせながら廊下を歩いていた。  だがここは自分が働いている病院で流石にそんな怖い顔をして患者さんや廊下を歩く人達にはそんな表情は見せられないとでも思ったのか、すれ違う人達には軽く会釈しながら歩き続ける。 そしてどうにかこうにか、さっき雄介に言われた事を気にせずに自分の部屋へと戻って来た望は体を預けるかのように自分の椅子へと腰を下ろし、それと同時に大きなため息をし天井を見上げるのだ。  久しぶりに仕事上で疲れた様子の望。 いや体力的にではなく今さっきの雄介の事で精神的に疲れてるという感じだ。  再び大きな息を吐くと机の上に仕事が溜まっている事を思い出し、色々な意味でもう一度ため息を漏らす。  今さっきの患者さんの事と仕事の事で頭いっぱいになっている望。  その時、和也が桜井の病室から戻って来たようで、 「望ー!」  と声を掛けてくる。 「なんだよ……和也……」  そう面倒くさそうに答える望なのだが、和也は同い年という事もあってなのか、それともコンビを組んでいる医者と看護師だからなのか、そこの所は分からないのだが、この二人というのはプライベートでは名前で呼び合っていた。 「なーんだ? そのだるそうな返事の仕方は……俺だってさ、望と同じ部屋なんだから、来たっておかしくねぇだろ?」  そうここの病院ではコンビの医者と看護師は同じ部屋で仕事をする事になっている。  だからなのか仲良くなる感じがまたいいところなのかもしれない。 なんでも言いたい事は言える仲良くなれば医者や看護師という壁みたいなのがなくなるのだから、もっともっと仕事的にも人間関係的にも本当にいい事だらけの制度なのであろう。

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