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ー友情ー6

「なら、大丈夫ですよね。 今日から俺が勤務時間帯は桜井さんの担当看護師になる、梅沢和也です。 よろしくお願いしますね」  そう和也はいつもの明るい笑顔で桜井へと挨拶をする。 「へぇー、男性で看護師さんなんて珍しいですよね。 それで、看護師さんとお医者さんが同じ俺の担当さんになるってことなんですね」  そう桜井はICU室にいた頃とは違い、楽しそうに関西弁を話し始める。  どうやらこの桜井という人物の出身は関西の方なんだろう。  だが働く場所は東京になってしまったということなんであろうか。 「ここの病院では女性の看護師さんは逆にいないんですよ。 どうやら、カッコいいとか可愛いとかっていう男性看護師ばかりを雇っているそうなんですよね。 だから、女性の方からは人気のある病院になってしまったようなんですがね」  和也の方も話好きなのか、桜井と楽しく話を始めたようだ。 「って、事はここの病院には男性しかいないという事なんですか!?」 「まぁ、基本的には男性の方しかいませんね。 でも、問題とかは起きたことはないので大丈夫ですよ。 全くもって下心は無しで女性の患者さんにはあたってますからね」 「へ? ほな、昨日見たあのべっぴんさんは!? 女医さんではないって事なんですか?」  桜井はその和也の言葉に目を丸くするのだ。 だって、そうだろう。 桜井は昨日見たお医者さんを女医だと思っていたのだから。 まぁ、昨日のマスクに帽子を被っていたなら確かに見間違えるのかもしれないのだけど、それでもそれを女性と間違えるなんて事は珍しいのかもしれない。  一方、和也の方は桜井が望の事を女性だと言い張る事に笑いそうにはなっていたのだけど、どうやらそれを我慢しているらしい。 そう和也からしてみたら望は同僚みたいなものなのだから、流石にそこまでは笑えないと思っているからなのかもしれない。 「ええ、勿論! 男性ですよ」 「えぇー!? ホンマに男性なんか!?」 「本当ですよ」  どうにか手で口元を押さえ笑いを耐えていた。  その時、病室のドアをノックする音が聞こえて来るのだ。 「失礼いたします」  そう言って入って来たのは今噂をしていた望だった。  声だけで望だということが分かった和也は、桜井の耳側で、 「噂をすれば吉良先生がいらっしゃったようですよ」  この間桜井にあんなことを言われてしまい未だに機嫌の方も直るわけもない望なのだが、桜井の担当をしている以上、仕事は仕事として、そこはしっかりと割り切っているのか、 「どうですか? この病室は?」  そう業務的なことを口にするのだ。

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