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ー友情ー5

「とりあえず、今日一日何もなければ、明日には一般病棟に移れますからね」  と、患者さんに優しく語りかける望。  桜井は未だに意識がはっきりと定まっていないのか、ぼんやりとした瞳で望を見つめている。  ただ単に意識がはっきりしていなかったから、そういう風に望のことを思ってしまっていたのか、桜井は考えていた。 「俺の担当医さんは女医さんなんやなぁ。 俺、初めてこんな可愛い人を見たような気がするわぁ」  と、桜井が口にすると、望はその言葉で機嫌を悪くしてしまった。  望は昔から女性っぽい体付きに長い睫毛と、確かに女性っぽいと言われたことがあった。 だから望からすれば、本当にそれだけは絶対に言われたくはない言葉でもあった。 暫くそのことについて触れられなかったか、忘れかけていたことだったが、桜井に口されてしまい、不機嫌そうな顔を見せていた。  それは本当に望からすれば一番言われたくない言葉で、それを全くも関係のない他人に言われてしまったのだから、望の心の中は少なくとも穏やかではないことだろう。  望は今直ぐにでもこの病室を後にしたかったのか、そこに居た和也に怒った口調で、 「とりあえず、桜井さんの方はまだまだ足は痛いと思いますので、注射の用意していただけますか!?」  と指示を出し、桜井に注射を打つと、速攻ICU室を後にする。  その病室から自分たちがいる部屋へ戻る途中、今の桜井の言葉が頭の中を過ぎっているのか、望は険しい表情のまま病院の廊下を歩くのだ。  今の望の心の中というのは、まるでマグマが煮えたぎる思いなのかもしれない。  そして和也と望の部屋に戻ると、持っていた桜井さんのカルテ等を思いっきり机へと叩きつけるのだ。  これが桜井と望の出会いだ。  出会いは最悪。  しかし、この後に起こることで二人の距離は少しずつ縮まっていくのかもしれない。  それから暫くして何もなかった桜井は無事に一般病棟の方へと移される。  ストレッチャーで桜井のことを一般病棟へと運んで行く和也。 「申し訳ないのですが、ただ今、この病院は病室の方が個室しか空いてなくて、個室の方で大丈夫ですかね?」  と話をしながら、和也は一般病棟の病室へと入ると桜井の体を抱き上げてベッドへと移すのだ。 和也からしてみればもう何年ものこの仕事をしているのだから、男性一人位持ち上げるのは簡単なことだった。 「まぁ、今回は仕事中の怪我ですし、きっと、上の方からお金も出ると思うので大丈夫だと思いますよ」

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