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ー友情ー4
その患者さんが目を覚ましたと同時に声をかけたのは、昨日、望と一緒にその患者さんを診ていた梅沢和也だ。 たまたまICU室にいたのか、それとも昨日の今日で、その患者さんの様子を見ていたのかは分からないが、そこにいたその患者さんに声をかけるのだ。
「目が覚めましたか?」
「あ、ああ……まぁ……」
そうゆっくりと返事をする患者さん。
すると間髪も入れずに、
「ここは……?」
呼吸器の合間から聞こえて来る声は籠もって聞こえてきてしまい、はっきりとは聞こえて来ない。 それに気付いた和也は、その患者さんの方へと言葉を聞き取るために近づき、
「ここは病院ですよ。 まぁ、ここは病院の中でもICU室という場所ですけどね。 桜井さんは昨日の現場火災で怪我をされて、この病院に運ばれて来たんですよ。 覚えていらっしゃいますか?」
「あ、まぁ……なんとなくなら……」
和也はその患者さんが意識を取り戻したということもあり、その患者さんに近づくと付けてあった呼吸器を外すのだ。 そうすることで、今まで呼吸器の中で籠って聴こえてしまっていた声がはっきりと聞こえてくる。
「あー……そうだったわぁ……俺、あの現場で、二階から一階に落っこちたんやっけな。 ほんで、怪我してしまったから、今はこの病院へと運ばれたってことなんやっけ?」
そう怪我したことを思い出したのか、独り言を漏らす。 きっと意識がハッキリとしてきたと同時に昨日の記憶も蘇って来たのであろう。
そう一人納得している、その患者さん。 しかし、和也の方は業務の方をこなさなければならない。
一つ軽く咳払いをすると、
「あの……思い出してくれるということは記憶の方には問題がないことになるので、よろしいのですが、お一つだけお聞きしてもよろしいでしょうか? ご自分のお名前って分かりますか?」
「あ、あぁ! 俺の名前か? 俺の名前は桜井雄介……って言うねんけど、これで良かったか?」
「そうでしたか、ありがとうございます」
そう言うと、和也はパソコン画面に向かいその患者さんの名前を確認するのだ。
そして、和也は担当医でもある望に連絡を入れると、しばらくしてICU室へと入って来る望。
ここは重症者患者さんが多いICU室なのだから、例え医者であっても髪の毛一つも落とせない場所だ。 だから髪の毛を覆う帽子にマスク着用は必要で、ここに入ってくる者はマスクに帽子を被っているのだから、誰であっても瞳しか見えていない状態でもある。
そして、望はその桜井さんの所へと来ると業務的な言葉をかけるのだ。
「体の方は痛くないですか?」
「あ、ああ……はい……まぁ……」
そう声をかけると、望は雄介の体へと聴診器を当て様子を見ている間、桜井はじっと望のことを見上げていた。
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