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ー友情ー20
「そうなんですかー?」
と和也の言葉に答えた後に、
「よし! これで、俺も仕事の方に復帰やな!」
そう一人嬉しそうに気持ち大きい声で独り言を呟く雄介。
そんな言葉に望は、
「ああ、そうだな。 まぁ、また、その体で人の命を守って……くれ……あ……」
最後まで望が言葉を言い切らないうちに和也の方は検査室に行く準備を整えたのか望の言葉を遮るように、
「では、レントゲン室に行きましょうか?」
そう言って和也は雄介の事を車椅子を使って押し病室からそそくさと出て行ってしまう。
そんな様子に望の方は呆れたようなため息が漏らすのだ。
そういつも以上に和也の行動が早かったのだから。
そんなおかしな行動をしている和也に望は首を傾げながらも、ぐしゃぐしゃになってしまっていた布団を直す。
「桜井雄介か……」
そうベッドの上の方にある名前札を見ながらぼそりと口にする望。
「本当は……今、告白の返事しようと思ってたのにな」
望はそう口にし軽く布団を直すと自分の部屋へと戻って行くのだ。
部屋に戻ってからはパソコンに向かうもののこう何か気が乗らない様子の望。
ため息を漏らしてはボッーとしていた。
「……ふぅ……そういや、アイツ……早ければ後二、三日で退院しちまうんだっけ? あ! そうだ! 戻って来て……って、俺がそんな事、思っちゃいけねぇんだよな。 本当はもう二度とここには戻って来ちゃいけねぇ筈なのに……」
さっきから望はそんな事を口にしながらパソコンを開いているものの全く集中出来ないでいる すると突然部屋のドアが開いて誰かが入って来たらしく望の机の上に何かを置くのだ。
「はい! アイツのレントゲン写真!」
「ん? あ、ああ……」
望は和也から雄介のレントゲン写真を受け取るとそのレントゲン写真の映像を機械へと翳し、
「んー、まぁ、これなら大丈夫そうだよな」
そう一人納得する望。
「そっか……なら、良かったんじゃねぇのか?」
患者さんが治ったというの事は医者や看護師からすると本当は嬉しい事なんだろうが今の望はどうやら違うようだ。
「ん? まぁ……そうなんだけどな」
そこで再びため息を漏らす望。
「なんか、その様子だと患者さんが退院出来るっていうのに嬉しくなさそうな感じだよな」
「……そんな訳ねぇだろ!」
と間髪入れずに、強く言ってしまっていた望。 そう和也がそんな事さえ言わなければ今さっき考えていた事を思い出す事はなかったからだ。
だが望は直ぐに切り替えたのかレントゲン写真を翳す機械の電源を切ると再び席へと戻りパソコン画面へと視線を移す。
それから暫く望の方も外来や手術等で忙しすぎて雄介と二人きりの時間等取れる訳もなく時は過ぎていった。 そして望は雄介に告白の返事をしないまま雄介は完治すると退院当日となってしまい、和也や望は雄介の事を玄関先まで見送ると雄介の方は何事もなかったかのようにタクシーへと乗り込み行ってしまったのだ。
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