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ー友情ー27

 夜中か夜明けか、三時頃になると、望たちが働く春坂病院では、救急車のけたたましいサイレンの音が鳴り響いてくる。 しかし、望たちにとっては日常茶飯事のことであり、患者さんが来るまでには色々と準備し、待機していた。  その中で、当直中の望と和也は救急隊員からの受け入れ要請を受け、病院で受け入れ態勢を整えた頃、救急車が夜間救急入口に到着する。 「救急車が来たみてぇだな」 「ああ」  救急車が病院に入ってくるのは当たり前の光景だ。 夜中に来るということは、患者さんが緊急事態に陥っている可能性が高い。  望と和也は真剣な眼差しでストレッチャーから降りてくる患者さんを見つめている。 それが誰であろうと同じだ。  しかし、救急隊員に名前を聞いた途端、望の顔色が急変するのは無理もない。 それが知り合いなら尚更だ。 「名前は……桜井雄介さん。」  その名前を聞いた瞬間、望は目を見開く。 そして次の瞬間、そのストレッチャーに乗っている患者さんの顔を確認するかのように見ると、やはり救急隊員が言っていた名前と望が知っている人物と一致してしまったようだ。 「え? あ……う、嘘だろ!? ちょ、桜井さん! 桜井さーん!!」  望の真横で救急隊員が色々と症状やら何やらと伝達しているのにも関わらず、望は親しい仲のように、ひたすら雄介の名前を呼び続ける。  しかし、雄介は現状では意識がないようで、望の問い掛けに一切答えることはなかった。  次の瞬間、雄介が着ている消防の制服の内ポケットから何やら紙のようなメモのようなものが落ち、望はそれを拾う。  確かにそれは雄介の物なのだから読んではいけないと思いながらも、望はその手紙の内容を読み始めてしまっていた。  一応望はその手紙を読んだものの、今はその手紙の内容どころではない。  望は自分を落ち着かせるためにひと息吐くと、そこにいる看護師たちに指示を出す。  雄介の手術を終わらせた望。 今回も雄介は望のおかげで一命を取り止めた。  後はICU室で様子を見ながらの状態になったのだから、一先ず望は自分の部屋へと戻って行く。  そしてさっき雄介の内ポケットから落ちた手紙を読み直すのだ。 「……マジかよ!?」  さっきはほんの一瞬目を通しただけだったのだが、今度は真剣に読んでみたようだ。 「桜井さんが誰かに命を狙われているだと!? しかも、初めて桜井さんがこの病院に来てから……ってか、犯人見つけてやらないと、例え、また完治しても再びこの病院に来てしまうっていうことなんじゃねぇのか? 今回は一命をとりとめているけど……もし、今度ここに運ばれて来た時に、もう、俺の手で施せないような状態で来たら?」  今はこの手紙の内容を見た瞬間、手を震わせる望。 だって、誰もがそうだろう。 そんな脅迫じみた内容の手紙なんか普通の人では殆ど無い話なのだから。 実物を見てしまったら、手が震えてしまうのは当たり前なのかもしれない。  さっき一瞬取り乱して望なのだが、直ぐに冷静沈着な自分へと戻り、フッとある事を思い出したのか、和也がいるICU室へと向かうのだ。

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