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ー友情ー38

 望は窓際で外を見ていた和也と「やっぱりか……」との会話をしていると、何かに気付いたのか急に椅子から立ち上がり、和也を退けて窓からその患者さんを見つめる。  患者さんの姿を確認した望。 どうやら望の目は間違っていなかったようだ。  今の救急車で運ばれてきた人物とは、望が思っていた人物のようで、望は後先考えずに診察室を後にしてしまった。 「おいっ! ちょっと!! 望! まだ、午前中の診察終わって……な……い……あ、行っちゃったよ……。 え? でも、何があったっていうんだ?」  とりあえず行ってしまった望にため息は出るものの、和也は何で望が出て行ってしまったのかを確認するために窓の外を見つめる。 「なるほどな……望が診察室を出て行ったのはそういう事だったのか。 あの、桜井雄介がまた運ばれて来たって訳ね。 あれ以来、何もなかったのに今回はどうしたんだかな?」  そうため息を吐きながら、今は診察室を出て行ってしまった望の椅子に腕を組んで座る和也。  一方、望の方は診察室を出て救急用の入口に向かっていた。  今の望は、きっと手術の終わりを待つ家族のような気持ちなのかもしれない。 「あの、角を曲がればっ!」  そう言った瞬間に、望の目の前を雄介を乗せたストレッチャーが通り過ぎて行く。  それを見た望はそのストレッチャーを追いかけ始めるのだ。 「おい! 雄介! 雄介!」  もう無意識のうちに、望は雄介の名前を勝手に呼んでいた。  その望の声に雄介は気付いたのか、雄介は血が未だに付いている手を震わせながら望の方へと伸ばし、 「あ……ぅ……スマンな……また、ここに……っ……来てもうて……」  雄介は痛みで顔を歪ませながら望に向かって何故か謝っている。 「雄介っ! 今度は何が……っ!」  そう雄介に何があったかを聞こうとしたのだが、雄介はそのまま処置室の方に運ばれて行く。  望は今まで全力疾走して来たからなのか、息を切らしながらも雄介が処置室の方に入って行く姿を今は見守る事しかできなかった。  そう、今の望は救急外来ではなく外来だからだ。  望は仕方なく外来診察室の方へと足を向け、そして和也は戻って来た望に、 「……で、桜井さんの様子はどうだったんだ?」  和也の方もあまりにも望が最近、桜井の事を言うものだから和也の方も一応心配になったのであろう。 「今はまだ処置室の方に入ったばっかりだ……」  望は未だに呼吸を乱しながら、いつもの診察室にある椅子へと座るのだ。

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