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ー友情ー48

病院の中庭は温かい春風を呼び込み、日々と暖かさを増している今日この頃。草木は新芽へと変わり始め、青々と病院内を囲んでいる。 空は快晴で青色に染まり、周りは生命の息吹で緑色に囲まれ、今の季節は気持ちいいほどだ。 「んー!! 外はやっぱ気持ちええわぁ!!」 雄介はそう言うと、本当に久しぶりの外の空気に触れ、思いっきり腕を空へと向かい伸ばす。 「そうだろうな……ずっと病院の中にいると飽きてくるもんだもんな」 望も外の空気に触れ伸びをしたくなったのか、望の方も思いっきり体を伸ばすのだ。 「んん! 気持ちいいもんだな!」 「ほなら、もっと、気持ちええことするか?」 「ん? ……それはまだ俺が許さねぇよ……ちゃんと体を治して動けるようになってからだな」 「ま、そこは先生が言うんやったらしゃーない所やね。 ほな……」 雄介は望の腕を自分の方へと引き寄せると唇を重ねる。 「……ん」 二人にとっては恋人になってからの初めてのキスだ。 今まで色々あり過ぎて苦労してきたのだから、ご褒美みたいなものだろう。 しかもここに来るまで時間が掛かってしまったのだから、余計に初めてのキスには特別なものがあるのかもしれない。 そりゃ、もしかしたらこの二人だっていい年なんだから彼女の一人や二人は過去にいたのかもしれないが、二人がカップルになってからの初めてのキスになるのだから、二人からしてみたらファーストキスという事になるだろう。 過去の恋人の事に関しては今の二人にとっては関係のない話なのだから。 そして雄介は少し名残惜しそうに望の唇から離れ、 「今度する時には俺が上やからな……下からやとこうやりにくいし」 雄介はそんなことを言いながら悪戯っ子のような表情をし笑みを浮かべながら望のことを見上げる。 「そういうもんなのか? なら……」 望はそっと雄介の頬を両手で包むと唇を重ねるのだ。 最初、望は雄介のことはあまり好きじゃなかったのに今ではこうして望自ら雄介にキスをしているのだから、男同士のカップルでも問題なかったのかもしれない。 それにファーストキスというのは特別なものだ。 特別な筈なのに平気だったのだから望にとって雄介は特別な存在になったのであろう。 「ん……」 そして雄介は多少満足したような表情になると、 「ん、まぁ……今日はこれで満足できたし、部屋に戻ろうか? 望の方も仕事残っておるんやろ?」 「え? あ、まぁな……」 望の方もそう答えると、いつも以上の笑顔を浮かべる。 そして望が雄介の車椅子を押し、病室の方へと戻って行くのだ。 望は雄介の体を支えて雄介をベッドの方へと移そうとしたのだが、 「もう、支えはいらんよ……俺だって、早く復帰していきたいし自分でやれる事はしていきたいしな。 それに望の細い腕じゃあ、あの梅沢さんのように支えられんやろうし」 その言葉に一瞬はムッとしたものの雄介の言葉に納得し、 「じゃあ、またな」 「ああ」 望はそう言うと部屋へと戻って行く。 そして部屋に帰って来て早々に、 「案外、戻って来るの早かったんじゃねぇのか?」 「え? まぁ……そうなんだけどさ。 アイツが気を使って戻してくれたんだよ」 そう部屋に戻って来てからの望は、なんかこう幸せオーラが出ているようにも思える。  しかもさっきの雄介からのキスでも思い出しているのか、望の顔は緩みっぱなしだ。

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