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ー記憶ー11

 何もなければいいのだけど。 と思いながら望はテレビの方へと視線を移す。  テレビの方に視線を移しても、なかなかお風呂から上がって来ない雄介が気になっているからなのかテレビに集中することもできないでいる望。  そこでふとある事を思い出したようだ。  確か、ある夜に運ばれて来た患者さんの奥さんの話によると、 『お風呂場で足を滑らせて頭を床へと打ち付けたらしく意識が戻らない!』  と言う事だ。  その事を思い出すと望はすぐに立ち上がって急いで雄介がいるお風呂場へと向かうのだが、まだ付き合い始めたばかりで裸のままでいるお風呂に向かうのは躊躇するところだ。 だが先ほどの事を思い出してしまった望は、雄介のことが気になってしまったという事だろう。  とりあえず風呂場へと向かう事にした望はリビングを出て廊下へと出るのだが、お風呂場からは水音は一切聞こえて来なかった。 シャワーだけなら廊下に出た時点で水音が聞こえて来てもおかしくはないのだが、何故かその廊下に足を向けても一切シャワーの音は聞こえて来ない。  さっきの話が今望の頭の中に過ぎる。  望がそんな心配している中やっとの事でお風呂場へと着き扉を開けると、そこにはぐったりとした雄介の姿が視界へと入って来るのだ。 やはり望が思っていた事が的中してしまったという所であろうか。  望は必死な声で雄介に声を掛ける。 「おい! 雄介!」  家中に響き渡りそうな声で雄介を起こそうとするのだが、まったくもって雄介が起きて来る気配はなかった。  そんな雄介にパニックを起こしても仕方がないと思った望は深呼吸をすると医者の性分なのか雄介の手首を取って脈を計り始めた。

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