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ー記憶ー20
望はちょっと和也に話をしただけあるのであろう。 午前中とは違い、少しだけではあるが、望の表情が明るくなったようにも思えるからだ。
和也もその姿に安堵し、望の後に続いて午後の診察の準備を始める。
午後の診察が始まる直前に、望は再び和也に相談を持ち掛けるのだ。
「あのさ……やっぱ、伝えるのはメールじゃダメだよな? やっぱり、電話の方がいいかな?」
「ダメに決まってんだろ! 確かに今の時代っていうのはメールで伝えるのは楽なことかもしれないけど……やっぱ、本当に自分の気持ちを伝えたいなら、最低でも電話で伝えることをお勧めするよ。 じゃなきゃ、相手に本当の自分の気持ちなんて伝わらないからな」
和也は望に伝わるように少し大きな声で言うと、望はその和也の気迫に負けたようで、
「分かったよ……」
そうぼそりと口にする望。
和也の言葉に納得すると、望は午後の診察を始めるのだ。
午前中の時とは違い、いつものように診察を終える望の様子を見て和也は胸を撫で下ろす。
午後の診察までも終わらせると、部屋へと戻る二人。 また書類を片付け掃除を始める。
「昼間言っていたこと、絶対に実行しろよ! じゃなかったら、望のことを俺が奪いに行くからな!」
「え? まだ、お前……俺のことを?」
「ああ、当たり前じゃねぇか……俺には望しか見えてねぇんだしよ!」
和也からしてみたら今の言葉を本気では言ったわけではない。 そうもう望に手を出そうなんてこと全くもって考えてもいないからだ。 今は二人が幸せになって欲しいと願うキューピットみたいな存在で見守って上げたいと思っているのであろう。 そう和也はもう十分過ぎるほど望の性格を知っている。 だから後は望の背中を押して上げればいいだけの話なのだから。
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