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ー記憶ー30
和也が出て行ってしまった後、雄介の部屋は静かな空間と変わってしまっていた。
雄介は大きなため息をつくと、ベッドに寄りかかって携帯を開く。
でもやっぱり雄介の方も、望同様になかなかボタンを押せずにいるようだ。
そして雄介がそう望に電話を掛けるか掛けないかで迷っていると刻々と時間だけが過ぎていくだけだ。
今の時刻はもう既に夜中の零時を差し掛かっている。
でも確かに和也の言う通り今掛けなければ次いつチャンスが来るか? っていうのが分からない。 いや、もう二度とチャンスはないのかもしれない。 それにこのまま放っておいたら和也に望のことを取られてしまうのかもしれない。 それに多分、今日というチャンスを逃してしまったらもう二度と電話を掛けるチャンスがなくなってしまうような気がしたのであろう。 そうなってしまったらますます雄介と望の心は離れてしまうかもしれないとでも思ったのか、次の瞬間には指が動き通話ボタンを押していた。
何回かのコール音。 だが望が出る気配はなく、間もなく留守番電話サービスへと繋がる頃だったのであろうか。
望は眠っていたのか、ただ単に電話に出るのが面倒くさかったのか、そこは分からないのだが、電話の向こう側に出た望は本当にだるそうな声で出る。
『……はい』
「望か? 俺や! 俺!」
出てくれた望にそう興奮気味に答える雄介。
『あ、ああ……ぅん……分かってる……。 あ、その……だから、俺はその眠いわけで……また、今度に……』
「それはアカン……俺らにとって重要な話やし、今、聞いて欲しいんやって」
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