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ー記憶ー35

「……って、おい……!」  雄介は今の望の答え方に体がよろけそうになったが、すぐに体勢を立て直して、 「あれ? お前医者やろ? そういうこと勉強してこなかったんか?」 「したよ。 だけど、自分で作るのめんどくせぇし、一人分だと野菜とか余るじゃんか。 だから、最近は時間とかある時にしか作らないかな? ま、そこは栄養剤でどうにかしてるって感じだな」 「ま、まぁ……ええわぁ……そこは、これからは毎日のように俺が作ったるしな。 二人分位なら材料余らへんやろ?」 「え? あ、まぁな……って事はこれから仕事終わってから来るって事か?」 「まぁ、正確には一日置きって事になるんかな?」 「一日置き!?」 「ん? 消防士の仕事って知らんの? 基本的には二十四時間勤務なんやで」 「へぇ、そうだったんだな……」 「ま、ええわぁ。 ほんで、この前の話なんやけど……望は俺の温もりを忘れたくないって言うておったよな?」  その雄介の言葉に、先ほどのことを思い出したのか急に顔を真っ赤にする望。  そして気付くと、もう大型スーパーの駐車場へと着いていた。 「昨日、そう望は電話で言うてくれたやんか。 だから、こうして俺は望との約束を守るために仕事終わってから来たって訳なんやって……まぁ、正確には一日置きって事なんやけどな」  雄介は望の手首を掴むと、自分の方へと引き寄せ望の事を後ろから抱きしめる。 「望は……俺の温もり忘れたくないんやろ?」  昨日、望が言ってくれた言葉を電話越しではなく望の耳側で言う雄介。  そのセリフを聞かれると望は恥ずかしくて仕方がないようだ。 雄介の方に顔を向けてないようなのだが、顔を真っ赤にしているのだから。  だが望は電話の時のようになかなか言葉にできないようで、黙ってしまっている。  それが望の性格なのであろう。  そう、本人を目の前にすると面と向かって言葉にできないタイプなのかもしれない。

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