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ー記憶ー94
夕日が見える病院の帰り道、雄介はもし今日の出来事がなければ、二人は楽しい休日を過ごしていたのかもしれないと考える。 デパートへ向かう車の中で、雄介は望からの誘いを思い出す。「一緒に住まないか?」という望の提案は、デートを終えた後に雄介だけが望の家に行き、残りの荷物は休みの日に運ぶという計画を立てていた矢先に、思わぬ事態が発生してしまった。
しかし、現在望は家にいない。 主人が不在なので、雄介が無断で望の家に入るのは考えものだ。 そして、もしこの出来事がなければ、雄介は自分の家に帰る必要もなかったかもしれない。
明日からは雄介も仕事が待っている。 恋人が記憶を失ったとしても、くよくよしている場合ではない。 雄介の仕事は助けが必要な人々に対応するものであり、記憶喪失が治癒不能ではない限り、望の記憶が戻るまで待つしかない現実を受け入れなければならない。
少し家で考えた後、雄介は何かを吹っ切ったようだ。 立ち上がりながら、「ほな、飯でも作るかっ!」と元気な声をかけ、台所に向かう。 しかし、テーブルに置かれた携帯が震え始め、メールが届いたことを知らせている。 手が離せない状態であるため、雄介は急ぐ必要がないと考え、料理を終えてからメールを確認することにした。
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