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ー記憶ー95
料理がテーブルに並び、雄介の視線に携帯の点滅が入る。
「メール来ておったの忘れてたわぁ」
雄介にとって携帯は特に重要ではなかったようで、望の記憶が戻っていた頃には、二人を結ぶ大切なツールだったのかもしれない。 しかし、今の雄介にとってはただのガラクタのように思える。 雄介の携帯には望からの連絡はない。 メールの相手は和也で、彼からのメッセージを読み始める。
『よっ! さっき、約束しただろ? 望の情報を随時伝えるって』
雄介はご飯を口に運びながら和也のメールを読み進める。
『ま、当たり前だけど、まだ、望はまったくもって記憶は戻ってはねぇけどさ、でも、検査では何も異常はないらしいから、このままいけば一週間くらいで退院出来るってさ。 今はそん位かな?』
「一週間か……」
長くも感じられる短い期間だ。 雄介は悩みを抱える。 一日おきに病院に行っても望にとっては雄介の存在が理解できないだろうし、雄介が病院に見舞いに行っても仕方ないのではないかと思ってしまう。 新たな悩みが頭をよぎる。
一日おきに望の元を訪れ、どうしても望と顔を合わせる必要があるのだろうか。 望との会話が分からない。 記憶のない望との会話が続くのかどうかも不透明だ。
これが記憶のある望なら問題はない。 しかし、記憶のない望との会話が続くかどうかが分からない。 逆に毎日のように望と会い、自分のことを思い出させることができないだろうか。 もし望みがあるなら、その方向に賭けてみるべきだと雄介は感じた。 そして、雄介は結論を出し、和也へとメールで返事をする。
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