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ー記憶ー97
雄介は仕事の合間を縫って、望の病状を見に行く日々を送っていた。 和也との会話を通じて、望の日常は問題ないようで、普通の会話もきちんとできていることが分かっていた。
「まぁな。 しかも、今日一日、仕事の合間をぬって望の様子を見に来ていたんだけど、日常的には問題ないようなんだよな。 普通の会話もちゃんと出来るしさ」
雄介は和也に対して、望の様子を報告し、今後の方針を相談していた。 和也が問うてきた質問に対して、雄介は少しうつむきながら答えた。
「会話は出来るんやなぁ。 ほな、覚えてへんのは人物だけなんか?」
「あ、いや、過去の記憶もなんじゃねぇのか? 少なくとも俺と出会ってからの記憶はねぇ訳だしさ。 あとは仕事の方なのかな? そこまでは仕事してみねぇと分からないんだけどさ」
和也との会話が途切れると、望の寝息だけが静かに聞こえてきた。 雄介は和也に別れの挨拶をし、望の病室を後にすることに決めた。
「ほな、望の方もまだ寝とるみたいやし、俺、帰るな」
「そっか……また、明後日も来るんだろ?」
「ああ、まぁな」
「それは別に構わないんだけどさ。 お前も方も体には気を付けろよ。 望ばっかに構うのはいいんだけどさ……自分の体調の方も管理してくれねぇと困るしさ。 望がもし回復してお前がいなかったら困るだろ?」
雄介は和也の言葉に微笑みながら感謝の意を示すと、病室を出て病院を後にした。 帰り道、雄介はいつもよりも道のりが遠く感じられ、望が隣にいないことを痛感する。 一人で歩くと、どうしても寂しさが募るものだ。
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