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ー天災ー5
長袖の上に着込んだ防護服。 防護服の中は、ただの暑さではない。 身体中から汗が吹き出し、まるで蒸し風呂の中のようだ。
このほどの汗が吹き出しているのなら、水分を摂らなければ脱水症状になってしまうかもしれない。
しかし、現場ではそんなことは言っていられない。 こうして毎日、訓練を積まなければ、体が慣れることもない。
そんな中での訓練と体力トレーニング。
トレーニングを始めると、ますます身体中から汗が吹き出し、それはまるで滝のように流れ落ちる。 そして、身体中を不快な思いにさせる。
そんな訓練中にも、思い出されるのは朝の出来事。 明日は仕事が終わった後に久々に望と食事をする日だ。 あんなことがなければ、雄介は素直に家に帰ることができた。
体は動かしているものの、未だにそんなことを考えてしまう雄介。
気持ちは仕事についていけない。
そういう時、体力が持ってかれてしまっているのか、気付いた時には息を切らして膝や両手を地面につけてしまっていた。 今の雄介は精神的にも体力的にもおかしくなっているのだろう。
「……桜井! 桜井?」
訓練以外のことを考えていた雄介は、反応が遅れて返事をする。
「次!」
「あ、お、おうっ!」
と返事はしたものの、
「わぁっとっ!!」
そういう声と共に、バランスを崩し、背中にしょったタンクごと転んでしまった。
どれだけ雄介は朝の出来事で動揺しているのだろうか。
いつもならこんなヘマはしない。 いつもの雄介なら、訓練の時でも真面目に取り組んでいるはずだ。 本当に今日の雄介は心を乱している状態なのだろう。
「大丈夫か?」
「ああ、まぁな……。とりあえず、この防護服のおかげで怪我しないで済んだわぁ」
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