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ー天災ー6
そう笑顔で答える雄介だが、坂本からすれば今日の雄介はいつもとは異なり、様子がおかしいのは明白だった。
「お前、少し休んだほうがいいんじゃないか?」
「そういう訳にはいかんやろ? 消防はチームなんやからなぁ」
雄介は体を起こし、再び訓練を始める。 おそらく今はそんなことを考える場合ではないと思ったのだろう。
「……確かにそうだけどさ」
心配そうな坂本だったが、いつもの雄介に戻ったような気がして、少し安心した瞬間、消防署内に警報器が鳴り響く。
「要請があったみたいやな」
考え事をしていた雄介は急に真剣な表情になり、体を正した。 たまたま訓練をしていたのが幸いしたのかもしれない。 防護服を着ていたので、そのまま消防車に乗り込み、現場に向かう。
現場に近づくにつれ、周囲は煙で鼻や目が刺激された。
火災が起きているマンション周辺にはビルや建物が多く、二次災害の危険性があった。
消防車が現場に到着すると、そこは最近当たり前になってきた高層マンションだった。
そのマンションの十階辺りから火が上がっていた。 現場には、消防車がひしめき合っており、消火活動も始まっていたが、未だに火勢が収まらない。
流石はこれだけの火事だけあって、現場周辺は騒然としていた。 報道陣、野次馬、警察、消防、救急車が混在し、現場は大混乱だった。 ここまでくると相当な大規模火災であることが明らかだろう。
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