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ー天災ー10

 雄介は1020室が見つかった喜びで声を上げ、ドアノブに手を掛けて一気にドアを開けると、部屋の中はもう火の海の中だった。  全くもって人の気配はない。  しかし、さっき言っていた親の話だと、この部屋に子供がいるということだ。  一応、人の気配がなくとも雄介は部屋の中へと歩みを進める。  この中で本当に子供がいるのであろうかというほど、この部屋だけが火の勢いが激しい。 もし居たとしても生きていないのかもしれないという状態だからだ。  でもやはりさっき必死で叫んでいた親の顔を雄介の頭を過っているようで、 「絶対に生きとるっ!」  そう信じて雄介は部屋内へと突き進む。  一番奥にある部屋へと来てみたのだが、やはり気配はないどころかリビングだったのであろう部屋内はテーブルから椅子まで僅かに形が残っているというだけで燃えてしまって何もない。  果たして本当にこんな状態で人間が生きているのであろうか? と疑問にさえ思えてしまう程だ。  雄介は倒れていたタンスなどの下を見てみるのだが、やはり人の影さえも見当たらない。  そろそろ諦めて引き返そうとすると、背中にしょっているボンベが警報器を鳴らし始める。 「もう、ある意味……限界やな……」  そう思って雄介は本当にこの部屋から引き返そうとしたのだが、ある声が雄介の耳に入ってきた。 「助……けて……」

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