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ー天災ー32

 恋人と離れて暮らすなんて考えてもみなかった。  世間で言われている遠距離恋愛。  この世の中には確かに遠距離恋愛をしている人々は沢山いるのかもしれないが、今回のことは本当に突然すぎて、思考が追いついていなかった。  逆に遠くに離れてしまって相手のことをより愛おしく感じるのかもしれない。 そこは経験してみないと分からないところだ。  恋人になったらずっと一緒にいたいという気持ちはある。  雄介は一人、電車の中で見える景色を眺めながらまた今日何度目かのため息をつく。  それからしばらくして、望の家に到着する雄介。  雄介の前に建つ望の家。  確かに望の家というのは大きいのだが、今日は何故か本当に大きく見えるような気がして仕方がない。  雄介は望の家の門の扉に手を掛ける。  流石に望はもう先に帰宅しているのか、家には明かりが点いていた。  雄介は門をしっかりと閉めると、望の家へと歩を進める。  しかし、どうやって望の家に入ろうか。 やはりそこは黙って入る訳にはいかないだろう。  一緒に暮らしていても失礼だと思う。  かと言って、あんな事があったのだから明るく入る訳にもいかない状態だ。  雄介は門からそんなことを考える。  今日は本当に一日、いや昨日から悩ませてくれる日だ。 雄介にとっては久しぶりに頭を使った日だ。  雄介は玄関まで辿り着くと、一呼吸する。  そう、この扉を開けたら今日はもう何が起こるか分からないからだ。  何回も深呼吸を繰り返す雄介。  きっと心臓はいつも以上に高鳴っているに違いない。  雄介は意を決して、望の家のドアノブに手を掛け、一気にドアを開ける。  そして、 「ただいま……」

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