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ー天災ー33
そうして、雄介は普通の声で家の中に入っていった。
しかし、家の中に入ると電気は点いているものの全くもって人の気配は感じられなかった。
一応、望がいるだろうと思われるリビングに向かうが、そこにも望の気配はなかった。
鞄は置いてあるが、本当に望の気配はない。
望は帰宅してきて自分の部屋にでも行ったのかと思ったが、鞄はリビングのソファの上に置いてあるので、きっと自分の部屋には行っていないだろう。
部屋の様子をよく観察すると、奥にあるお風呂場から水音が聞こえてくる。 つまり、望は今お風呂に入っているということだ。
なぜか、雄介は今日の出来事でホッとしていた。
また、これから望と会える機会なんてそんなにはないかもしれない。 もしかしたら、時間が自分たちの関係を修復してくれるかもしれないと思った雄介は、リビングを後にし自分の部屋へ向かった。 そう、一緒に暮らすようになって望に使っていいと言われた部屋がある。 客間だったはずだが、一緒に暮らすようになってからは使わせてもらっている。
これでしばらく望と合わなくてもいい。
時が経てば、今日あった出来事なんて忘れてしまうかもしれない。
雄介は部屋に入るとベッドに横になった。
今日は本当に疲れてしまった。
体力的にも精神的にも。
だからなのか、いつの間にか今日は眠ってしまっていた。
次の日、雄介は起きて階下へと向かったが、もう望の姿はなかった。 残念だと思う反面、良かったと思う気持ちもあったかもしれない。
雄介はシャワーを浴びて仕事場へ向かった。
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