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ー天災ー34
昨日は望と話すことができなかった。
これ以上は望と話す機会や会う機会はないのかもしれない。
だって、望と住むようになってから、望と雄介は殆ど顔を合わせる機会がなかったのだから、きっとこれからもそんなにあるはずはない。
だが、このまま雄介が異動になったということを望に伝えないままでいいのだろうか。
しかし、こんなに近くにいるのに、なぜこんなにも会える機会が少ないのだろうか。
お互いに忙しい仕事をしているのだから仕方がないのだけれど。
でも、恋人同士なのだから、もっと一緒にいたいという願いは叶わないのだろうか。
雄介はデスクワークしながら考える。
昼休みになると、雄介は自分のロッカーに向かい、携帯の電源を立ち上げる。
さっきまで色々と考えていた。
そこで思い付いたのが携帯だ。
今は本当に便利な時代になってきた。 今や誰もが持っている携帯電話。 昔、携帯なんかなかった時代には、その人に電話を掛けるなんてことはできなかったけれど、今はそれが簡単にできてしまう時代になっている。 各家庭にある固定電話というのが主流だったのだから。 そして、固定電話というのは線が繋がっていて下手すれば立ったまま長電話をしていたものだ。 固定電話でも、親機と子機付きの電話が出てくると、その子機を自分の部屋に持ち込んで転がりながら電話をするのは可能だったけれど、本当に携帯というのはもっと便利になったと思える。 携帯だと電話はもちろんのこと、メールだってできるようになってしまったのだから。
そして、雄介は携帯を開くと望にメールを打ち始める。
だが、そのメールを打っている途中で和也が言っていたある言葉を思い出してしまった。
『お互いの気持ちを伝えたいなら、メールなんかじゃなく、せめて電話にしろ』
という言葉だ。
それを思い出してしまった雄介はメールを打つのを止め、携帯を閉じてしまった。
そして再び大きなため息をつく雄介。
「やっぱ、望には何も伝えずに行くしかないんやろうか?」
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