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ー天災ー36

 初めて望の家を見たとき、その大きさに驚いた。 そして初めて望と喧嘩したのも、望の家だった。 なぜこんな形で別れなければならなかったのだろうか?  雄介は望にちゃんと話をして別れる予定だったが、実際には望との食事の後、全然会う機会がなくなってしまった。 そのため、望にこのことについて話すことさえもできなかったことが、どうしても悔いが残る。  最後に話したときも、なんとなく喧嘩状態みたいな感じになってしまい、それからまた会えなかった。 だから雄介の心もきっと晴れてはいない。  雄介はしばらくその場で思い出の望の家を眺めていたが、もう早く行かないと今日中に着かないと思い、車に乗り込んだ。 そして望には何も告げずに、勝手に引越してしまった。  その日の夕方、雄介が何も告げずに引越してしまった。  望は仕事を終えて家に帰宅した。 いつものように自分の家の門まで来ると、門を開けて車を庭の方に向かわせ、ガレージに車を移動させる。 しかし、今日はいつもと違う感じがする。気のせいだろうか。  ガレージには一台の車しかない。 寧ろ、望の車しかないと言った方が正しい。 雄介の車がない。 雄介の車と望の車が隣同士で置いてあったはずなのに、今日は珍しく雄介の車がない。  前に雄介は言っていたが、自分では殆ど車を使わないようなことを言っていたはずなのに、今日は本当にその車がない。  仕事場まで近いからといって使っていなかったはずだ。  まあ、今日は雄介にしては珍しく遅刻しそうになって車で行ったのかもしれない、と望は考えながらガレージを後にする。

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