227 / 1471

ー天災ー48

 望はその後、何事もなかったかのように、雄介から視線を外すと、体を反転させ、物資の搬出へと向かおうとした瞬間、後ろから誰かに手首を掴まれた。 「……何だよっ! 離せっ! 俺とお前はもう他人同然なんだからよっ!」  怒りと同時にそう言い放つ。 そして、雄介に掴まれている手首を離そうとするが、雄介の方はその掴んだ手を離そうとはしない。 寧ろ、もう離さまいと更に強く握っているようにも思える。  雄介の方は頰を叩かれ顔を上げられないだけなのか、それとも望には顔向け出来ないという事なのか、顔は全く上げずに、 「今回の事はホンマにスマンかった」  そう雄介は申し訳なさそうに言うと、今度は顔を上げ、望の視線へと合わせ、 「せやけど、俺だって……その……めっちゃ悩んで……出た答えやったし。 その気持ち……分かってくれへんかな?」 「……分かる……分かる訳ねぇだろうがっ! いいから、とりあえず、この手を離せよっ!」  そうだ。 今は雄介にどんな事を言われても許す訳にはいかない。  だから望は自分のありったけの力を振り絞って、雄介から逃れようとするが、日頃から鍛えている雄介はまったくもってビクともしない。 本当になかなか離してくれようとしない雄介。 「お前、いい加減にっ!」 「……出来る訳ないやろ? この手、もう一生離したないんやからな」  雄介は本気なのだろう。 今度真剣な瞳で望の事を見つめているのだから。

ともだちにシェアしよう!