226 / 1471

ー天災ー47

 ヘリコプターはプロペラ音を立て、ゆっくりと屋上に降りてくる。  その降下中、ヘリコプターの扉が開かれた。  プロペラ音と風圧が消えると同時に、望は手を顔にかざし、ヘリコプターの扉を見つめた。  もしかしたら、このヘリには雄介が乗っているかもしれないと期待していたのかもしれない。  そして同時に、望はある人物の姿を見つける。 「あ……」 「……望!?」  望の目の前に現れたのは、何も告げずに別れた雄介だった。  まさか二人がここで再会するとは思っていなかった。  確かに雄介の方は東京で災害があったことを知っていたが、再び春坂に降り立つとは思っていなかったのかもしれない。 望の方もまた、雄介がこのヘリに乗っているとは思っていなかった。  だが久しぶりの再会だったはずなのに、何故かその言葉の後には沈黙が流れてしまった。  そしてその沈黙を破ったのは望だった。  望は雄介の方に向かい、拳を握り締めながら顔を俯かせたまま、雄介の目の前で彼を見上げた。  そうすることで、視線が自然とぶつかり合う二人。 「……望?」  雄介が声をかけようとしたその瞬間、何かが皮膚にぶつかる音が響き、痛みも走ったようだ。  雄介からすれば、この一瞬の出来事が何が起こったのかさえ分かっていないようにも思える。  雄介が気づくと、頬が痛かったのか片手で頬を押さえていた。 人間は痛みを感じると無意識にそこを押さえてしまうものだ。  その光景を和也は見ていた。 彼の視界に入ってしまったのだから、仕方がない。 和也は二人のことを気にしながらも、ヘリから出される物質を病院内に運び続けた。

ともだちにシェアしよう!