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ー天災ー46
カンカンカンカンという音を立てながら階段を上る途中で見えてきた街並み。
今までの街並みはもう存在しない。
あんなに賑やかだった街並み。
毎日のように活気に満ちた街並み。
住宅が密集していた街並みはどこへ消えてしまったのだろうか。
そこには今までの景色はなく、未だに所々から白い煙が立ち上っている。
きっと階下にはまだまだ助けを求める人々がいるのだろう。
その階下の景色を見ながら、二人は屋上へと向かう。
途中で見えてきた青空の中の赤いヘリコプター。
そのヘリコプターは大きな音を立てながら、望が働く病院へ向かっているのだろう。 病院に近づくにつれ、ヘリコプターの音は爆音に近くなっていった。
ヘリコプターが病院に近づくと、一旦停止し、その後ホバリングしながら徐々に屋上に降りてきた。
望や和也は風圧を避けるためにヘリコプターから少し離れて待機していた。 そこで、彼らはヘリコプターを見上げる。
「……消防庁?」
消防庁と聞いて、望の恋人である雄介のことが思い浮かんだ。
もしかしたら望の心の中では、そう考えているのかもしれない。
……まさか!? このヘリに雄介が乗っているのでは!?
いや、流石にそれはないだろう。
だって雄介は望を置いて他の場所へ行ってしまい、もう望のことなんか忘れて他人だと思っているかもしれないから。
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