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ー天災ー81
午前中から出かけていたはずなのに、気がつけば外はオレンジ色に染まっていた。
望と雄介は、望の家でどれほどの時間を二人きりで過ごしたのだろうか。
それはともかく、明日からまた仕事が始まる。 働くこと自体は嫌ではないが、ただ離れるのが寂しいのかもしれない。
再び見えてくる街並み。 同じ風景なのに、朝とは違う何かが漂っているように感じるのは気のせいだろうか。
病院に戻ると、ロビーはいつも通りの混雑ぶりだった。 望と雄介はその中を抜けて部屋に戻る。
部屋に戻ると、和也の姿はなく、テーブルの上には食べ物が並んでいるだけだ。
「ん? 和也のやつ、いねえんだけど」
「そやなぁ……どこに行ってまったんやろ?」
そう言いながら、雄介は望と一緒にソファに座り、おにぎりを食べ始める。
そしてしばらくして、和也が部屋に戻ってきた。
「あれ? 望たち帰ってたのか」
「あれ? その服は?」
今日は望と和也が休みだったはずなのに、和也はいつもの看護師の制服を着ていた。
「人手が足りないって言われてさ、それで手伝ってたんだ。 俺的にはもうかなりゆっくりしたし、この仕事は好きな方だからな。 ま、それはいいとしてぇ!」
そこで和也は一旦話を止め、続ける。
「なんか、人手不足ってことで、人員を増やしたみたいでな……で、今日から、暫く俺の元で働くことになった本宮 裕実 だ!」
そう言われて初めて気づくが、和也の後ろに眼鏡をかけた少し可愛らしい雰囲気の子が立っていた。 可愛らしいといっても女性ではなく、どうやら男性らしい。 寧ろここは男性しか雇わないはずだが、それでも彼は本当に可愛らしく見えた。 そして和也よりも体も背も小さいようだ。
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