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ー天災ー82

「……へ? 俺たちのところに来るのか? 布団ねえぞ。あ! そっか! なら、和也と一緒に寝ればいいんじゃねえのか?」 「ああ、それはそれで俺は構わないって思ってるからさ」  そう二人がちょうど話が終わったところで、裕実が望たちに挨拶をしてくる。 「では、し、失礼します。 本宮裕実っていいます……宜しくお願いしますね」  きっと裕実は緊張しているのだろう。 こう言葉を詰まらせながら自己紹介をしていたのだから。  そしてそれをひと通り終わらせると、和也は裕実にこの部屋のことを案内しに行ったようだ。 と言ってもあるのは寝室と今は使えないシャワー室しかない。 「ホンマ、アイツ男なんかいな? なんかこう、初めて望に会った時みたいに可愛えっていうんか、男子っぽくなくて華奢で……髪も後ろで束ねておるし、背も低いしな」  そう雄介の言う通り、裕実という看護師は望よりも、こう後ろ姿というのは女性のようだ。 しかも望よりも背が低いのだから余計に女性ぽく見えてしまっているのかもしれない。 「……って、その話をまた持ち出してくるのかぁ!?」  望は半分はふざけたように雄介のことを睨み上げる。 「……ぶっ! そんな目で見んなやぁ、噴き出してもうたやんか!」 「今の望ってめっちゃ怖っ!」と付け足そうとしたのだが、今度は本気で怒ってきそうな望に食べ物を口に入れて誤魔化す雄介。  和也は一通り裕実に部屋の案内を済ませてきたのか、望たちがいるソファへと戻って来る。  そして改めて挨拶を交わすのだった。 「俺は吉良望だ。で、隣にいるのが、今回の地震で救助に来ているレスキュー隊の桜井雄介だぜ」 「どうも、はじめまして、本宮裕実っています。 桜井さんはどうして、ここにいらっしゃるのですか?」 「……へ?」  その質問に雄介と望は視線を合わせる。  こうもストレートな質問にどうしたらいいのか。 っていう意味で目だけで会話をしているのであろう。

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