267 / 1471
ー天災ー88
「ん? 和也? 望ん事起こさんくてええのか?」
「もう、知らねぇよ!」
和也がいくら起こしても望の方は起きて来てくれないらしく、和也の方は気持ち的に怒っているようにも思える。
「せやけど、起こさんとアカンのやろ?」
「いいんじゃねぇ? 怒られるのは望なんだし……」
「ほな俺が起こしてくるな……」
「ああ」
そう言って、望の元に向かった雄介。
もし雄介に望の事を起こせたならば、こう悔しい感じがするのは気のせいだろうか。 その雄介の後ろ姿を視線で追ってしまう和也。
「望ー?」
最初は優しい声で起こす雄介なのだが、やはり起きようとはしない愛しの恋人。
雄介は仕方なさそうな息を吐くと、
「こうなったら、最終手段しかあらへんな?」
そう望の耳元で囁き、
「望……朝やで……早よ起きないと遅刻してまうし」
そう甘い声で望の事を起こすのだが、僅かに反応はするものの、望が起きてくる気配はなかった。
「まーだ……起きないんかいな。 しゃーないな……もう一個の手段で……」
雄介は横向きで寝ている望の体を仰向けにさせると、
「お姫様は王子様のキスで目を覚ますっていうのが定番なんやで……」
そう望の唇に近付こうとした時に望は目を覚ましたのか、雄介と視線が合ってしまったようだ。
「お前なぁ、朝から何をする気だったんだ?」
そう言いながら望は雄介の事を避け体を起こそうとしたのだが、突然雄介の腕に抱き締められる。
「……雄介?」
ともだちにシェアしよう!