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ー天災ー97

「中庭へと向かうと、今日は雲ひとつない快晴だったようだ」 「んんー! 外は気持ちいいよな!」  望はおにぎりを口にしながら、天に向けて腕を伸ばす。  しかし、病院の敷地外ではまだ瓦礫やガラスが散乱している状態なのだろう。  いつこの東京という街が平常な状態になるのかはまだ分からない。  しかし、地震当初はあった煙などは、もうなくなってきている。  今は地震で東京のシンボルであったビル群さえも見えない状態だ。 病院の屋上から前まではそのビル群が見えていたのに、今はそれさえも見えなくなってしまったのだから。  そう考えながら、望は空を見上げる。  周りが変わっても空はいつまでも変わらないからだ。 いや、空というのは毎日のように違うのだが、青空というのはいつまで経っても変わらない景色という事だ。 「急にどうしたんだ? しみじみと空なんか眺めちゃってよー」 「んー? 今は何も無くなっちまったけど、空っていうのは変わらないんだなーって思ってよ」 「ああ、まぁ、そうだよな」 「周りは何もないのにさ」 「ああ、うん……」  望にそう言われて和也も周りの景色を眺めてみる。 そして、 「やっぱ、俺も昨日、望達と一緒に行けば良かったかな? やっぱ、自分の家って気になるし」 「次の休みにでも行ってみればいいだろ?」 「そうだな……そうしよ」 「その時はコイツ連れてけばいいじゃん!」  そう望は和也に対しニヤケながら言うと、望の隣に座っている裕実の背中を軽く叩いたつもりだったのだが、気付くと裕実は前に転けてしまっていたのだ。

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