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ー天災ー108

 転勤の前に、望がハッキリと雄介に愛の言葉を伝えていたとしても、雄介は転勤を止めてくれたかどうかはわからないだろう。 いや、そこは無理なことだ。 望が雄介のことを止めたとしても、雄介の仕事上の都合で転勤となるのだから、それは仕方のないことかもしれない。  でも、もし雄介がちゃんと転勤のことを望に伝えてくれていたら、もしかしたら残りの時間を有効に過ごすことができたのかもしれない。  有給を使ってデートに行くことだってできたはずだ。 旅行でも、雄介が転勤でどこかに行ってしまう前にそういうことはできたはずなのに、雄介は望に何も告げずに行ってしまった。  しかし、神様はなぜまた二人に再会をさせてくれたのかは分からない。 突如いなくなって、突如現れた雄介。 そんな雄介に言葉では何も言えないまま、望は雄介の頬を叩いてしまった。  だが、その行為では雄介のことを許せなかった。 しかし、雄介はその後も本当に言い訳をせず、ただひたすら望に謝っていた。 すぐに言い訳をする人もいるかもしれないが、雄介の場合は言い訳もせずにただ謝ってくるだけだった。 その姿に、何となく許してしまったのかもしれない。 そして、望がやっと雄介のことを許したとき、雄介は言い訳を始めた。 言い訳というより、説明かもしれない。 しかし、どちらが正しいのかは分からない。 でも、雄介は謝罪の後に説明をしていた。 多分、望はそのことで雄介を許すことができたのだろう。

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