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ー天災ー111

 望が今悩んでいて眠れない理由は、雄介にも痛いほど理解しているかもしれない。  それは雄介だって同じだからだ。 「ほな、俺は行ってくるな!」  雄介はそう笑顔で言うと、和也と裕実に手を振って部屋を出ていく。 「さて、俺たちも行くかっ!」 「そうですねっ!」 「……って、今日はあんまりドジ踏むんじゃないぞ」 「え? 僕ってそんなにドジを踏んでますか?」 「ああ」  裕実の天然っぽい反応に和也は即答する。 「そんなことないですってばー」 「何だ? お前、自覚がないの?」  二人も会話をしながら部屋を出ていく。  そしてやはりというべきなのか、一人部屋に残されている望は考え込んでしまう。  考えることはやはり雄介のことと今担当している患者さんのことだ。  雄介とはまた近いうちに離れてしまう。 そんなことは分かってはいるのだけれど、やはり寂しい。  そこでため息をつく望。 「やっぱり、俺もダメだなぁ。 本当に俺、雄介のこと好きになっちまってるみたいだ。 だって、今だって……こう、雄介がまた怪我でもして入院してくれたらな……なんて思ってしまってる自分がいるしよ」  確かに望の独り言の通りに、雄介が怪我でもして入院してくれれば、今雄介が住んでる場所に暫く帰らなくても住むことにもなる。 でも実際、雄介を必要としている人達は沢山いる訳で、個人勝手なことで雄介を止まらせることはできない。

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