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ー天災ー123
今まで乗ってきていた和也さえも黙ってしまい、和也や望や裕実までもが一点を見つめている。
そして、和也たちが見ている方へと雄介も視線を向けると、そこには見知らぬ男性が白衣を着て立っていた。
「だから、さっきから言ってんだろ? 俺の側に来るなって!」
「ほぉー! 部屋の鍵を開けておきながら、それはないんじゃないかな? あれじゃあ、誰も入っていいですよ。 って言っているもんじゃないのかなぁ?」
「鍵が開いてるのは、患者さんのためでもあるんだよ。 もし、何かあった時に直ぐにこの部屋を出れるようにな……一分一秒でも争う現場だ。 その鍵を開けてる時間さえもおしい位だろ?」
いつになくイライラとしている望。 その望の後ろで望と話をしているのは裕二だった。
「それにさっきから言ってるけど、みんな、あの震災で体が限界ギリギリなんだ……夜は静かにさせてくれねぇかな? な……親父……」
そう望はサラリと「親父」という言葉を口にするのだが、その言葉をしっかりと聞いているのは望の隣にいる雄介だ。
今さっきの話では望の親父は多分ここには来ないって言っていたのに、もう既にここに来ている。 しかもいつからそこに居たかさえ分からない位に気配を消して来ていたのだから雄介からしてみたらビックリしただろう。 まさかさっき雄介が言っていた発言を聞いていないだろうか? と雄介の内心はヒヤヒヤしているのかもしれない。
そして雄介は見つからないように身をかがめる。
「久しぶりに日本に帰って来て、息子の心配をしない親はどこにいるのかな?」
望は一つため息を吐き、
「だから、さっき言っただろ? そういう事は暇な時にしてくれって……俺達は本当に疲れてるんだからさ。 それに、もう、消灯時間まで少ししかねぇんだよ。 親父がここに来たら、みんな余計に疲れちまうだろうが」
「……消灯時間!?」
「やっぱ、その事については知らねぇよな? 地震が起きてから、まだ、ライフラインはまだ復旧してないんだ……だから、この病院はとりあえず自家発電機があるから持っているようなものの、この自家発電機の燃料が無くなってしまったら、この病院だって危ういんだからな……その為には夜の二十一時になると節電の為に使わない電力は消されてしまうって訳だ」
そう望は裕二に向かって呆れたように言う。
「じゃあ、話すのは明日以降ってことで……。ところで、君の所には若い子が沢山いるようなんだけど、特に望の隣にいる子とは話してみたいかな?」
そう意味あり気に言いながら裕二は望達の部屋を出て行く。
裕二が行った後、望は大きなため息を吐くのだった。
「だから、親父には帰国して欲しくなかったんだよな」
「そう言うけどさ、流石にこの震災で院長不在なのはまずいと思ったんじゃねぇのか? だから、帰国してきたんじゃねぇのかなぁ?」
「確かにそうなのかもしれねぇな。 今まで外国で勉強してきてるらしいし……やっぱ、俺の親父で院長だから、俺なんかより技術も経験もあるんだよな。 そう、今まで親父がここにいなかったのは、外国で認められて、向こう技術とかも学んでいたらしいんだけど、それ以上に親父も医者としては凄いらしいから、呼ばれていたっていうのもあるのかな?」
そう言う望に他の三人は何故かニヤケていた。
「何で、お前等はニヤケてんだよー」
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