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ー空間ー36

「そうですよねー。 確かにお腹空きましたしね」 「だろ? だからだよ」  そう二人で話をしているうちに和也の車が置いてあった場所へと着くのだ。  和也からしてみたら二日振りの自分の愛車だ。  ここ二日、あーだこーだで病院の部屋に泊まっていたのだから。  そして車へと乗り込む和也だったのだがフッと気付くと裕実の姿がない。 てっきり助手席の方から乗ってくるのかと思っていたのだが、裕実はどうしたらいいのかが分からずに車の横でオロオロとしている姿が目に入る。 「おい! 何やってんだよー、そこは素直に俺の隣に座ればいいんじゃねぇのか? 俺達の仲は恋人同士だろ?」 「そ、そうですよねぇ。 で、では、失礼いたします」  裕実はそう言うと助手席側のドアを開け車の中に入ろうといたのだが大きな音を立てて額を車の天井へとぶつけてしまっていた。 「おい……大丈夫か?」 「だ、大丈夫ですよ。 こんな事、僕からしてみたら、日常茶飯事的な事ですからね」  そう和也には笑顔を見せるものの裕実は自分の頭を摩りながら和也の車へと乗り込む。  裕実が車へと乗り込むと早速エンジンを掛けようとしたところ、また裕実が何かしている。  こうもそもそというのか落ち着きがないというのかその様子を和也は伺っているとどうやら今度はシートベルトに苦戦しているようだった。 「え? まさか、お前……シートベルトの付け方知らないのか?」  そう和也はため息を吐きながら裕実に問う。 「え? あ、はい……実は知らないっていうのか、車に乗るのは初めてっていうのか……ま、そういう事だったんで、シートベルトの締め方知らなくてスイマセン!」

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