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ー空間ー35

 その和也のでっかい声に望が怒らない訳がないだろう。 「あー! もう! 和也うるせぇな!」 「あ、ゴメン……」  そう和也は望に謝ると、さっさと掃除用具をしまい服へと着替えると大人しく部屋を出るのだ。  和也は約束の時間五分前には職員用玄関で裕実が出てくるのを待っている。  今この時間まで、この職員用玄関を利用する人は多い。  それは今まで働いていた人達が一斉に出てくる時間だからだ。  その人波がある中で和也は愛しの恋人の姿を見つけ手を振る。  そう裕実の身長は結構低い。 低いと言っても男性の平均身長はあるのだから普通なのかもしれないのだが、望と和也が百七十センチ台で雄介に至っては百八十センチもあるのだから結構低い部類に入ってしまうのであろう。 だが、そこは愛の力ラブパワーで和也が裕実の事を見つけたという事だ。 「え? ちょ、いくらなんでも、そんな大きく手を振らないで下さいよー。 恥ずかしいですから」  裕実は和也の近くまで来ると本当に恥ずかしかったのか顔を赤くしながら和也の胸の辺りを叩くのだ。 「え? あ……ゴメン……じゃあ、行こうか?」 「はい!」  和也の方はスーツ姿だ。 別に服装に関しては出勤時とかには気にしないのだが今日の和也はスーツで来ている。 今日は和也にしてみたら裕実とは初デートなのだからそうしたのかもしれない。 和也だって病院のロッカーには洋服が置いてある。 今日はその予備を着て出てきたのであろう。 だが、もうプライベートの時間なのだから少し崩した着方をしていた。 ワイシャツのボタンは二個程外しジャケットの前のボタンは全開そんな格好をしている和也。  和也はとりあえず職員用の駐車場を目指す。  裕実の方は和也のその姿を追い掛け和也の隣へと並ぶのだ。 「和也さん、どこに行くんですか?」 「……へ? あ、ああ……先ずは俺の車を取りに行ってからは飯食いに行かないか?」

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