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ー空間ー46

 和也は食べ終えると両肘をテーブルへと付け手に顎を乗っけながら、裕実が嬉しそうに食べてる姿を見ていた。  裕実はそんな和也の姿に気付いていないのか和也の視線には全く気付かずにお肉を頬張り続けている。  その静かな空間に流れているのはクラシックだ。  クラシックというのは不思議な曲で、こう心の中をリラックスさせてくれる音楽である。  それが良かったのか心も体も満たされた感じがしているのかもしれない。  和也は何かこう思いに浸っているのであろうか。 少しぼんやりとしているようにも思える。  もしかしたら今までの裕実の事を考えているのであろう。  始め裕実はただのドジっ子だと思っていた。 そんな姿に和也は何でかフォローをしていたような気がする。 フォローをしていく度に「裕実は自分がいなきゃダメなのかもしれない」と言う感じがしてきて、いつの間にか和也は裕実の事を好きになっていた。 もしかしたら、それがきっかけで和也は裕実の事が好きになったのであろう。  だが望の場合にはどこを好きになったかさえ分からなくなってきている。 多分、ただずっと望と一緒に仕事が出来るっていうだけで良かったのかもしれない。 だから望とは親友関係でいいのであろう。  和也がそう考えているうちに裕実の方は食べ終わったのか少し食べ過ぎてしまったお腹をさすりながら水を口にしている裕実の姿が目に入ってくる。 「流石に食い過ぎたか?」 「はい……もう、お腹がパンパンで食べられません」 「そっか……じゃあ、もう、注文しなくていいな」 「はい!」 「じゃあ、裕実のお腹が落ち着いて来たら出ようか?」 「そうですねー。 だけど、これからどうするんです?」 「決まってるだろー! 今日は恋人同士になってからの初デートなんだからさ……やっぱ、アレしかないだろ?」  その裕実の問いに対して和也の方はニヤニヤとしていた。 その顔から裕実の方は何やら想像してしまったのであろうか。 急に顔を赤くし俯かせてしまうのだ。 「え? あー、やっぱあそこに行くんですか?」 「あ、ああ……当たり前じゃねぇか」  そう言う和也に対し裕実の方はもう何も言い返せなくなったのか更に顔を俯かせてしまうのだ。

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