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ー空間ー89
朝から裕実が何を言っているのか分からなかったのか、和也は着替えながら裏声を上げるのだ。
「だからですね……僕的には注射を患者さんにするのは平気なのですが、されるのは嫌なんですってばぁ!」
「なーんだ……そういう事か……」
やっと和也の方は裕実の言葉を納得したのか笑顔になって裕実の頭をポンポンと撫でると、
「やっぱ、お前って可愛いよな。 安心しろ……俺に任せてくれたらいいからさ。 注射が嫌いな人って昔嫌な思いっていうのか、痛い思いしかしてないから、嫌いになったんだと思うぜ」
「……痛くない注射ですか?」
「ああ、まぁ、注射って痛いってイメージがあるのかもしれねぇけど……やっぱ、テクニックで痛くないように出来るんだよな?」
そう言いながら和也は再び着替え始めるのだ。
「分かりました! 僕的に和也さんの事は信じてますからね!」
「ああ、じゃあ、なら、早く着替えろよ」
そう言うと和也は洗面所へと向かい仕事に行く準備を始める。
それから二人は出掛ける準備を済ませ、支払いを済ませ和也の車で病院へと向かうのだ。
和也と裕実は病院へと到着すると一旦は自分達の部屋の方へと戻る。
和也が部屋に戻って来ると部屋の方はまだ薄暗い。
多分まだカーテンは開けられていないのであろう。 という事は、まだ望は起きてないということなんだろうか。
和也が奥まで入って来ると相変わらず机の上でうっ潰して寝ている望の姿が目に入る。 しかも白衣を着たままだ。
「……ったく。 今日もあんな所で寝てたのか? もう! 風邪引いても知らねぇぜ」
とは言いながらも望が風邪を引いたら、きっと今は和也と裕実が看病してしまうに決まってるのだから。
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