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ー空間ー98

 和也は望へと近付くと望の事を起こさずに望の体をゆっくりと抱き上げ、望の体をベッドまで運んでいく。  きっと望の場合、今までの疲れが一気にきたんだろう。 さっき望が言っていた通りに今日、望は家に帰らなくて良かったのかもしれない。  和也は望の事をベッドで寝かせると静かに部屋を出て、裕実と待ち合わせしている職員用玄関の方へと急ぐ。  そして和也は裕実と一緒に今日は真っ直ぐに裕実の事を家へと送り届け、和也も真っ直ぐに家へと帰るのだ。  それから望が大阪へと向かう土曜日の朝。 和也は一昨日の予告通りに九時には望の家の前に来ていた。  和也からしてみたら望の家に来たのは本当に久しぶりだ。  本当にあの震災の時に望の家は崩れていなかったのであろう。 今もしっかりと建っていて何故だか和也の方もホッと胸を撫で下ろしている。  和也はガレージの方に車を止めると望の家の玄関まで行ってチャイムを鳴らす。 「いやに早かったんだな」 「まぁな」 「まだ、用意が終わってないからさ……用意が終わるまで部屋で待っててくれねぇか?」 「ああ」  そう言うと望は和也の事を部屋へと招き入れる。  本当に望はまだ用意が終わってなかったのであろう。 先程、和也がここに来た時には望の着替えは中途半端で首にネクタイを巻いていた途中だったのだから。  和也はリビングにあるソファで望が用意出来るのを待っていると、そこの横には大きなキャリーケースが用意してあった。

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