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ー空間ー97

「そんなこと気にすんなよ。 だって、そこは仕方ねぇじゃん! 今まで望は忙しかったんだからさ」 「ん……まぁ、そうだったんだけどよ。 親しい仲にも礼儀ありって言うだろ? だからな、一応」  望はそう言いながら、今まで忙しくて体にガタが来てるのであろうか、体を伸ばしながら言う。 「まぁな。なら、今日は帰ろうぜ。 ま、俺は裕実の事送って行くつもりだけどな」 「んー、どうしようかな? って思ってるんだよな。 確かに帰りたいとは思ってはいるんだけどさ……あと一日だけここで休もうかな? って思ってるんだよな。 体の方も言う事聞かないし」 「なら、ここで休んでった方がいいんじゃねぇ? 無理して運転して事故ちゃたら意味ねぇしな」 「じゃあ、俺はそうする事にするわぁー。 帰るのは明日の夜にして、明日帰ってから行く準備しても遅くはねぇしな」  和也は「そうしておけ」とだけ告げると、今まで使っていた掃除用具をしまい、ロッカールームで着替え始める。  そして和也は嬉しそうにロッカールームから出てくると、何だか部屋内が急に静かになったような気がした。  だが望が部屋内にいないわけではない。 望は未だに椅子に座っている。 だけどその後ろ姿は微動だにしない。  和也はゆっくりと音を立てずに望へと近付いていく。 すると、どうやら望はそこで寝てしまっているようだ。 望の寝息が聞こえてきているのだから。

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