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ー空間ー96
そんな望の嬉しそうな声に、和也の方も微笑ましく思う。
確かに望は「学会、学会」とは言っているものの、そんなことはきっと二の次で、雄介に会えることの方が上なのだろう。 そんなことは今までの望の姿を見ていれば分かる。 望は本当に雄介のことが好きなのだろうと、その気持ちがよく伝わってくる。
こうして見ると、やはり望は雄介のことが本当に好きなんだということが分かったような気がした。
だって望は和也の前ではそんなに雄介のことについては語らないものの、なんていうのかオーラみたいなのが、もう雄介好きですっていうのが出てしまっている。
望はまったくもって同性には興味はなかったと思う。 いや、女性の気配すら今までなかったのだが。
そういや確かに和也と望がコンビを組むようになってから、望には女性の気配がまったくもってなかったようにも思える。 だがそれ以前だってどうだったのであろうか。
そのことだって和也は知らない。
望に今まで女性とさえ付き合ったことがあったのであろうか。
だがいきなり男性の恋人ができて、それで今は今でそれを楽しんでいるようにも思える。 確かに今の望は雄介のおかげでイキイキとしているからだ。
「あ、そうだ! な、なぁー、望さぁ、土曜日の日、大阪に行くまでの時間、暇なんだろ? 空けておいてっていうのか、俺が空港まで送ってってやるから、その間、空けておいて欲しいんだけど……ほらほら、一緒にプライベートを楽しまないか? ってことなんだけどさ……ほら、たまには息抜きも必要だろ?」
「……へ? 土曜日はせっかく和也の方は休みなんだし、本宮さんとデートでもすりゃあいいんじゃないのか?」
「え? あー、まぁ、そこはいいんだけどさ。 とりあえず、俺たちの場合には仕事終わってから自由な時間があるんだし、いつでも会えるんだからさ。 とりあえず、決定でいいか?」
「あ、うん……まぁ……和也がそこまで言うんだったら、俺的には別に構わないんだけどさ」
「じゃあ! 決まりだね!」
そう和也の方は何か企んでいるのか、顔をニヤつかせていた。
暫くして和也の方も掃除を終わらせると、望の方も学会の資料の方も終えたのか、二人はほぼ同時に声を上げる。
「終わった!」
とその二人で声がハモり、二人は同時に笑みをこぼす。
一つは仕事が終わったということに、もう一つはハモったということだ。
「和也、ここんところ、お前に掃除任せて悪かったな」
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