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ー空間ー146
和也はそう言うと再びクスリとして運転に集中するのだ。
裕実は今抱えていた問題が解決できて安心したのだろう。 笑顔になると、窓の外を眺めながら、
「和也さんとなら、毎日のように……ホテルに行ってもいいですよ……」
とボソリと呟くように言うのだ。
その裕実の言葉に驚いたのは和也だった。 まさか裕実の口からそんな言葉が出てくるとは思っていなかったのだろう。
和也は少し間を置いてから、
「え? 本当にいいのか?」
そう聞くと、裕実はコクリと頷いた。
「じゃあ、俺たちはもう一回、楽しむかな?」
先程までの暗さはどこへ行ったのだろうか。 和也はいつもの自分を取り戻すと、今度は嬉しそうに車を走らせる。
和也は逆に言えば分かりやすい性格なのかもしれない。 ホテルに行けると分かった途端、機嫌を直したのだから。
先程、みんなで来たホテルの駐車場へ戻り、車を止めて再びホテル内へ入っていく和也と裕実。
このホテルは無人システムなのか、壁にある部屋を選ぶとそのまま部屋に向かえるシステムになっている。
明日も休みの二人は、今日はここに泊まることを決め、先程は休憩で入ったが、今度は宿泊ボタンを押して部屋に向かう。
部屋は先程とは違い、ベッドは一つだけの部屋だ。 しかし、ダブルサイズで大人二人が悠々と寝られるサイズでもある。
和也は部屋に入るとテレビを点けてベッドに横になる。 裕実も、もう恥ずかしいという気持ちはなくなったのか、和也の横に横になる。 すると和也は裕実の頭を優しく撫でる。
二人きりになり、テレビを点けながら和也は横にいる裕実の頭を撫でたり、服の上から体に触れたりとまったりしていると、突然テレビの上の方にテロップが流れてくる。
そして『ニュース速報』の特有の音に反応しない人間はいないだろう。
和也は裕実とのイチャイチャ時間を一旦止め、そのニューステロップを目で追う。
そこには二行に渡り簡単なニュース情報が表示されていた。
『先程、東京から大阪へと向かう飛行機、179629便がハイジャックされたとの情報』
と…。
「179629便!?」
和也は思わず、その飛行機の便を読み上げてしまう。
「あー、確か、それって、雄介や望さんが乗っている飛行機ですよ」
裕実は冷静に答えるが、それを聞いた和也は途端にベッドの上に立ち上がり、
「ちょ! おい! そこ、冷静に言ってる場合じゃねぇだろう! 望達が乗っている便がハイジャックされたんなら、ヤバイんじゃねぇのか!? 望達無事なのかな?」
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