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ー空間ー152

「この二人は仲がいいみたいだからな……コイツを俺の盾にしておけば、俺には手出しできねぇだろ? なら、コイツを人質に取る。お前は他の奴の監視をしてろ」  どうやら背の低い男の方が、背の高い奴の手下のようだ。 背の低い方の男はその男の指示に従っていたのだから。  そして望を人質に取った犯人は、左側の一番後ろの窓側の席へと座ると、望をその右側へと座らせ完全な人質の盾状態にしてしまったようだ。  一方、雄介は背の低い男に捕らえられ、手が使えないようにと後ろ手に紐のようなもので結ばれてしまい、一番後ろの席へと座らせられた。  狭いファーストクラスの席というのは、そんなに席数はない。 だからなのか、望を盾にしている犯人と雄介は監視下に置かれたかったのか、少し離れてはいるものの、雄介と望の席は隣同士になっている。  雄介は何か助かる手段はないかと一人で考えようとしたのだが、雄介の隣に座っている人物に声を掛けられた。 「桜井さん……僕のこと覚えていらっしゃいますか?」  確かに犯人が横にいるのだから小声で声を掛けられたのだが、何か考え事に没頭していた雄介はその小さな声でも体をビクつかせる。  しかし、今、雄介に声を掛けてきた人物は雄介の苗字を知っていた。 寧ろ雄介のことを知っているという人物だということだろう。  雄介はフッと声を掛けてきた人物の方へと視線を向ける。  その人物が視線に入ってくると、 「あー!」  と思わず声が出てしまった。 だが、その直後にその人物に雄介は口を塞がれてしまう。  とりあえず雄介以外の乗客はまだ縛られてはいないようだ。 「しっ! 静かにしてください……犯人にバレてしまいますよ。 あなたが僕のことを覚えてくれていただけでも違いますから」 「ん? あ……ああ……白井さんやろ?」  雄介はその白井に口を塞がれていた状態だったのだが、その隙間から小さな声で言うのだ。  だが、今、雄介は『白井さん』と口にしていた。 そう、前に会った時は刑事だったのだから『白井刑事』と言いそうになったのを雄介は止めたらしい。 ここで刑事という言葉が出てしまってはまずいと思ったのであろう。 「そうですよ。 あの事件以来会ってなかったのによく僕のこと覚えていらっしゃいましたね」 「まぁ、あの事件は俺からしてみたら忘れられへんしな。 とりあえず、あの事件以降、アイツとは仲が戻ったしええかな? とは思っておるんやけど」 「そうだったんですかぁ。 ですが、今は世間話をしている場合ではありません。 とりあえず、僕たちが助かる方法を探らなくてはならないと思うのですが……とりあえず、僕の方は今までのことをメモしているんですけどね」  雄介は白井が真面目になったのと同時に、雄介も真面目になったようだ。 「あんな……とりあえず、犯人達に見つからないように俺の紐を外してくれへんかな? そしたら、俺も動けるようになるし」 「確かにそうですね。 まずは縛ってある紐を解いてからじゃないと何もできませんからね」  白井はそう言うのだが、何を考えているのか顎に手を当ててしまっている。  雄介に結ばれている紐でも見ているのであろうか。  とりあえず結ばれている紐というのは、そう簡単には外れないようになっていた。 まぁ、確かにそう簡単に外れてしまっては意味がないからなのかもしれないのだが。

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