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ー空間ー168

「ん? 俺の方はホンマに平気やから……気にせんで……っ……早く来てくれへんか? 操縦士さんまで……助からなくなってまうし……」  雄介にそう言われて、白井は仕方なく操縦席の方へ向かい、操縦士さんたちを客席の方へと運んでいく。  そして、そこで白井は操縦士さんたちの様子を見て、 「とりあえず、ここでは縫うことはできないので、応急処置程度だけしておきますね」  そう望は笑顔で操縦士さんに言うと、今度は操縦席の方に行った白井に雄介のことを尋ねる。 「雄介の方は大丈夫だったのか?」 「ええ……あ、まぁ……」  そう答える白井は瞳を宙へと浮かばせていた。 「あ、えっと……とりあえず、桜井さんがこの飛行機を着陸させるとかって言ってましたけど……?」  そうごまかすように言う白井の様子が気になって仕方がない望。 「そっか……とりあえず、今の状況ではアイツにこの飛行機のことを任せるしかないんだよな?」  望はひと息吐くと、 「悪いが……お前、操縦士さんたちのこと、見ててくれねぇ? 俺は雄介の方を見てくるからさ……」 「あ! えー!? だから、操縦席にいる桜井さんの方は大丈夫ですってばぁ! 桜井さんの方も誰にも邪魔されたくないようですし、一人でいいって言ってましたから……」 「きっと、お前には分からないだろうな。 恋人のことを想う気持ちなんてさぁ。 雄介は今、この飛行機で起きた事件をすべて解決してきたんだぞ……どんだけ、大変だったかっていうの分かるかぁ!? そんな状況でも、まだ、やることはある。 操縦士さんがいない今、この飛行機の操縦をしているのは雄介ただ一人。 流石の雄介でも飛行機を操縦したことはないんだろうけど……でも、この中で冷静に操縦桿を握れるのは雄介だけなんだ。 あそこまで行ったのだから操縦桿を離すことができないだろうよ。 そして、操縦桿を握っているということは飛行機内にいる乗客の命も助けようとしているんだ。 一人でいるより、隣に誰かがいた方が安心できるんじゃないのか? 今、雄介の隣に行って、雄介の気持ちを少しでも落ち着かせられるのは俺しかいないんじゃねぇのかな? だから、俺は行くんだよ!」

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