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ー空間ー172
望たちが乗っていた飛行機はなぜハイジャック犯に乗っ取られたのだろうか?
望がいる病院のロビーにはテレビがあるが、勝手に点けてはいけないと思ったのか、携帯にあるテレビを点けてみることにした。
望はあのハイジャックの時の当事者なのだから、当然気になるところだ。 それに今は雄介が治療室なのか処置室なのか手術室なのか分からない状況なので、気を紛らわせるためにもニュースに集中したかったのかもしれない。
すると夜中にも関わらずニュースが放送されていた。 多分、日本ではあまりないことだから、マスコミがここぞとばかりに報道しているのだろう。
『犯人は何のためにこんなことをしたのか!? 未だに動機は分かっていませんが、このハイジャック事件において、勇敢な男性がいたようです。 その勇敢な男性は四人のハイジャック犯を捕まえて、しかも、自分は傷を負っているのにも関わらず、乗客全員を乗せた飛行機を着陸させたということです。幸いにもこの事件による犠牲者は三人。 操縦士さんと副操縦士さんと、その犯人と戦った男性の三人だということを先ほどの飛行機に乗り合わせていた刑事さんや乗客の方々が口にしています』
望はそこまで聴くと息を吐く。
「当然、今は情報はこれしかないんだよな。 犯人の取り調べはまだだろうし……」
そうポツリとロビーで独り言を言っても、誰もいないロビーでは誰も聞いてくれる相手はいない。そして望はソファへと腰を下ろす。
現在の時刻は午前一時過ぎ。
病院の窓ガラスからは月が顔を覗かせている。
雄介が処置室に入って、もう十五分。
たった十五分しか経っていないのに、望の中では一時間にも二時間にも感じられているのかもしれない。
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