517 / 1491
ー空間ー183
「乗客の命を守るために自分を犠牲にしちまうなんてよ。 本当に俺のことちゃんと考えてくれてんのか!? お前が怪我してるところを見たとき、どれだけ俺が心配したのかっていうのが分かってるのかよっ! でも、確かにあの時はお前がやらなきゃ誰がやるっ! っていう状態だったから、俺はお前に操縦を任せるしかなかったんだよ。 雄介なら、何とかしてくれそうだって心の中で思っちまっていたからさ。 だから、雄介が怪我してる中、操縦を止めなかったんだ! 本当にあの時、一番にハラハラしてたのは俺なんだからなっ!」
望はそこまで言い切ると雄介の方へと体を向き直し、雄介の頬を両手で包むと心配そうな瞳で雄介を見つめる。
望は本当に雄介のことが心配だったのだろう。 今日の望は表情一つ変えずに、瞳には涙を溜めて真っ直ぐに雄介を見つめていた。
「望……?」
そんな望の姿を見て、雄介は、
「スマンかった……せやけど、あの状況で、飛行機の中の乗客を助けられるんは俺だけやって思うてしまったしな。 それで、つい、一人で頑張ってしもうたって訳なんやって……。 それに、俺がやらんかったら、乗客どころか、俺等の未来もなかったのかもしれへんかったんやで……せやから、今日のは……」
「そんなことは分かってる……確かに助かったのはお前のおかげだよ……」
雄介が何か言おうとしていたのだが、望は雄介の言葉に被せるかのようにぼそりと口にする。
雄介は一瞬、望の言葉に不思議そうな顔をしていたが、それ以上は何も言わずに望の体を抱き締める。
これ以上何かを言ってしまえば、望のことだから再び雄介に背中を向けてしまうのは間違いないと思ったのかもしれない。
「雄介……?」
ともだちにシェアしよう!