「あのなぁ、朝から馬鹿なこと言ってねぇで、とりあえず案内しろっ！」 　と望は怖いくらいに命令口調で言うのだ。 「それと、お前はその背中の傷が治るまではお風呂は禁止に決まってんだろっ！ まぁ、拭くくらいはしないといけないけどな」 　昨日の夜の甘いムードはどこにやら……。　雄介は仕方なさそうに立ち上がると、望のことを風呂場まで案内してリビングでテレビを見ながら望がお風呂から上がってくるのを待っていた。 　雄介はリビングにある黒革のソファへと腰掛け、欠伸をしながらリモコンでテレビを点ける。 　すると、丁度今はお昼のニュースの時間だったのか、各局揃って昨日のハイジャック事件のニュースを報道していた。 　雄介はそのニュースを食い入るようにして見ていると、 『昨日の夜、東京の空港から離陸した飛行機が四人のハイジャック犯によりハイジャックされました。　飛行機が安定飛行を始めた直後にハイジャック犯たちは動き出し、犯人の二人は操縦席の方へ……もう二人の犯人はフロアに残り乗客たちを監視していたようです。　そして、操縦席へと入った犯人の二人は操縦士と副操縦士をナイフで脅し、更に足や腕などを切りつけ、犯人たちは操縦士席と副操縦士席を乗っ取ったと言っておりました』 　そこまでは雄介も望も見ていたのだから知っている情報だ。　だが雄介が今その事件で知りたいのは犯人たちの動機の方だろう。 　しかしアナウンサーはその内容を言うだけで、まだ他の情報はないようだ。　きっとそこはまだ犯人たちから警察が事情聴取をしているからであろう。