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ー空間ー230

「よっ!」  いつもの調子で雄介は診察室へと入って来た。  だが、そこには一つ望の変化があった。  望は前の教訓を生かしてか、雄介のことを追い返そうとはせず、 「そちらの椅子の方へどうぞ……」  と業務的なことを言いつつも、雄介を止まらせた。  前回は雄介をここで追い返してしまい、その一瞬すら話すことができなかったという思い出があったからであろう。 「あ、ああ……」  雄介も望の指示に従った。 「……で、今日はどうされました?」  だが、依然として業務的な言葉を使う望。 「え? あ、せやな……何から話したらええんやろ?」  雄介は望から視線を外しながら言った。 「あ、とりあえずな……俺……また、異動になったんよ」  雄介は切なそうに言った。 「あ、ああ……それで?」  そんな雄介の声を聞けば、誰でも異動先が東京や大阪ではない場所になるのだろうと分かるだろう。 北海道? 沖縄? あるいは四国? まさか海外ということはないだろうか?  とりあえず今の望は、雄介が答えるまで待つしかなかった。  その間、望の鼓動はいつも以上に高鳴っていたのかもしれない。 「その場所はな……」  雄介はなぜか言うのをためらっていた。  聴いている身としては、早く言ってほしいと思うのだが。  だが次の瞬間、 「あぁ! スマン! やっぱ、もう、言わへん方がええのかもしれへんわぁ!」

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