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ー空間ー229

 すると先に来て準備をしていたのは和也だった。 「やっと戻ってきたか。 まあ、いいやー。 また雄介とラブラブメールしてたんだろ?」  和也はそうニヤニヤしながら望の脇腹を突いた。 「確かに雄介とはメールしてたけどさ、でも俺たちの場合にはそんなにラブラブっていうほどのもんじゃねぇよ」  どうやら和也に雄介とのことを突かれるのにはまだ慣れていないらしい。 望は自分の席に座るとパソコンを開いた。  今はカルテを紙に書く時代ではない。 パソコンで何もかも管理する時代になってきた。 「相変わらずだなぁ。 望って、そういう話するとすぐに逃げるんだから」 「とりあえず、くだらねぇこと言ってないで、早く診察室の準備しろよな。 患者さんには待ったなしなんだから」 「ほんと、望って相変わらず真面目だよな……そういうとこ、疲れるんですけどー」  最後の方はブツブツと言う和也。 さすがに望にはそれは聞こえていなかったようだ。  二人が午後の診察を始めると、患者さんは次から次へと入ってくる。  そして落ち着いた頃だろうか。  また患者さんのことを呼び出すアナウンスで、懐かしいと言ったらいいのか、それとも聞き覚えのある名前と言うべきか、桜井雄介の名前が呼び出されていた。  その名前を聞いて、和也と望はほぼ同時に目を合わせて声を上げた。 「あっ!」 「だよな……もう、この名前はアイツしかいないよな?」  和也がそう言った直後に診察室のドアが開いた。

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