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五章ー雪山ー1

 雄介が東京に戻って来てから数ヶ月。  望と雄介は東京に居た時代と同じ暮らしをしていた。  二人の生活は相変わらず忙しいのだが、やはり一人で暮らしている時とは何かが違う。 例えそれがすれ違いの日々であっても、週に何回か一緒にいられることが全然違うところなのかもしれない。  そんなある日、仕事帰りに和也が急に望の所に泊まりたいと言い出し、和也は裕実と一緒に望の家へと向かう。  久しぶりに四人が集まり、キッチンには雄介と和也が立ってお互い好きな人のために料理をしている。  食事の用意ができると、食卓には料理が並べられてお酒を口にしながら話を始めるのだ。 「なぁー、もうすぐ冬も終わりそうやし、みんなでスキーとかに行かへん?」  そう雄介が提案すると、その話に乗ってきたのは和也だ。 「いいねぇ! たまにはさ、息抜きしねぇとだよなぁーってことで俺の方は賛成!」 「って、スキーってええよなぁ!」 「おう! 確かにな……それと、後は露天風呂なんかあったらもっと最高なんだけどなぁ!」 「せやなぁ、露天風呂なぁ!」  雄介と和也は何を考えているのか、二人の表情というのは今までにはないようなデレデレとした顔をしていた。  そんな二人の様子を見て望は二人が今何を考えているのかが分かったのか、それが望の方にも伝わってきたのであろうか、望は瞬時に顔を赤くすると二人の頭をグーで叩く。 「ちょー、痛いやんかぁ!」 「望……今のはマジに痛いって……!」  そう口々に文句を言う二人。 「何で殴るんだよー! つーか、俺らが望に殴られる必要が分からないんですけどー。 何か俺ら悪いことでも言ったのか? そうそう、お前に殴られるようなこと、俺らが言いましたか?」  和也はまだ頭が痛むのか頭をさすりながら文句を言うのだ。 「なぁ、なぁー、望? 俺らが何か言ったのか? 俺ら的にはただ単にスキーに行って露天風呂に入りたいって言っただけじゃねぇか……何か変な所あったのか? って聞いてんですけどー」

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